p.1 | 公開日:2026/7/30

1. はじめに

<p>この記事は$4$次元超対称性理論の入門的な解説記事です。 アカレポのデモとして書いていますが、内容としては過去に勉強した私のノートを再構成したものになります。 だいぶ昔のノートですので、参考にしている文献や記述が古かったり、誤りが含まれていたりするかもしれません。 お気づきの点がありましたら、お気軽にご指摘いただきますと幸いです。</p> <p>さて、超対称性とは、ボソンとフェルミオンを入れ替える変換に対する対称性です。 これは時空の対称性であるPoincaré代数と内部対称性を非自明に結びつける唯一の拡張であり、Coleman-Mandulaの定理[<a href="#cite-1" class="latex-cite-link">1</a>]を反可換な生成子の導入によって回避する形で得られます。 素粒子物理の文脈では、当初は標準模型の階層性問題に対する解決策の一つとして注目されましたが、LHCで超対称粒子が発見されていない現在においても、その意義が失われたわけではありません。 むしろ超対称性は、非摂動効果を制御しつつ場の量子論を厳密に調べるための稀有な「実験場」を与えてくれます。 実際、正則性にもとづくSeiberg-Witten理論の厳密解[<a href="#cite-2" class="latex-cite-link">2</a>,<a href="#cite-3" class="latex-cite-link">3</a>]や、局所化による厳密な分配関数の計算[<a href="#cite-4" class="latex-cite-link">4</a>,<a href="#cite-5" class="latex-cite-link">5</a>,<a href="#cite-6" class="latex-cite-link">6</a>]、さらには超弦理論・可積分系・幾何学との豊かなつながりなど、その数理構造そのものが現在も活発な研究対象であり続けています。 とりわけ$\mathcal{N}=4$超対称Yang-Mills理論は、共形対称性と最大の超対称性をあわせ持つことから、$\mathrm{AdS}_5\times S^5$上の超弦理論との等価性を主張するAdS/CFT対応[<a href="#cite-7" class="latex-cite-link">7</a>]の舞台となり、強結合領域の場の量子論を重力側から調べる指針を与えました。 この対応は今日では場の量子論・重力理論・量子情報にまたがる広範な研究の基盤となっており、その出発点にあるのもまた超対称性です。 本記事では、こうした発展の入り口に立つために必要な基礎を解説します。</p> <p>構成は以下の通りです。 まず$4$次元超対称代数の速習を行い、続いて超対称代数の表現について述べます。 その上で$\mathcal{N}=1$超対称ゲージ理論を対象にラグランジアンを構成し、最後に$\mathcal{N}=2$超対称ゲージ理論のラグランジアンを構成します。 なお、$\mathcal{N}=4$超対称Yang-Mills理論やその応用については本記事では扱いません。</p> <p>前提知識としては、場の量子論の初歩(正準量子化、経路積分、非可換ゲージ理論)と、Lorentz群の表現論およびWeylスピノルの取り扱いを仮定します。</p> <p>なお本記事では、主に[<a href="#cite-8" class="latex-cite-link">8</a>]、[<a href="#cite-9" class="latex-cite-link">9</a>]、そして[<a href="#cite-10" class="latex-cite-link">10</a>]の1章を参考にしています。 より発展した内容(Seiberg-Witten理論やNekrasovの分配関数など)を学びたい場合は、日本語文献では[<a href="#cite-10" class="latex-cite-link">10</a>]、[<a href="#cite-11" class="latex-cite-link">11</a>]が参考になるかと思います。 また、現象論寄りではありますが、初学者向けの文献としては[<a href="#cite-12" class="latex-cite-link">12</a>]が挙げられます。 記法は[<a href="#cite-8" class="latex-cite-link">8</a>]に従い、計量の符号は$\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(-1,+1,+1,+1)$、スピノルの添字はvan der Waerden記法を用います。</p> <p>本記事は、アカレポ上で数式や文献引用を含む解説記事がどの程度書けるかを試したものでもあります。 数式番号の参照、表、文献の引用といった機能を一通り使っていますので、アカレポで同様の記事を書かれる方の参考になれば幸いです。</p>