p.8 | 公開日:2026/8/21

8. まとめと展望

<p>本ノートでは、電磁気学が満たす2つの対称性――ゲージ対称性とローレンツ対称性――を出発点として、これらと矛盾しない共変な場の方程式、そして電磁場の古典的なラグランジアン密度の構成へと順を追って見てきました。 ゲージ対称性については、クーロンゲージとローレンツゲージという2つの代表的なゲージ条件を比較し、後者がローレンツ共変性を明白な形で保つ点で、共変な定式化に適していることを確認しました。 特に第7章で示したように、ラグランジアン密度 \begin{equation*} \mathcal{L}=-\dfrac{1}{4\mu _0}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}-s_\mu A^\mu \end{equation*} を出発点とするだけで、オイラー・ラグランジュ方程式からマクスウェルの方程式が再現されること、電荷保存則$\partial _\mu s^\mu =0$が場の方程式の無矛盾性から要請されること、そしてゲージ不変性のもとでは電磁場に質量項を加えられないことが示されます。</p> <p>これらはいずれも古典的な場の理論の段階ですでに現れる、ゲージ不変性の帰結です。</p> <p>なお、本ノートで扱ったゲージ変換は、変換のパラメータが1つのスカラー関数$\Lambda (x)$であり、かつ異なる変換同士が可換である「可換(アーベル)ゲージ理論」でした(電磁ポテンシャルのこの種の変換は、量子論では複素位相の群であるU(1)群のゲージ変換に対応します)。 これに対し、強い相互作用(SU(3))や弱い相互作用(SU(2))を記述するには、変換群が非可換(非アーベル)であるような、より一般の「非可換ゲージ理論(ヤン・ミルズ理論)」が必要になります。 この場合、場の強さテンソル$F_{\mu \nu }$やゲージ場の変換則の定義は本ノートで見た形を自然に拡張したものになりますが、ゲージ場同士が互いに相互作用するという、可換ゲージ理論にはない新しい特徴が現れます。 また、非可換ゲージ理論を物質場と結合させるには、本ノートでは扱わなかった「共変微分」の考え方が本質的な役割を果たします。</p>